World Password Day:パスワードではなく、アイデンティティを守る時代へ

TOKYO, JP | 2026年06月17日

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World Password Day(世界パスワードデー)は、強いパスワードを選ぶよう促すだけの日ではありません。今や、アイデンティティについて考え直す絶好のタイミングとなっています。現代の攻撃者がシステムを強引にハッキングすることはめったにありません。彼らは正規の認証情報を悪用し、本人になりすましてアカウントを侵害します。現在、そして未来にわたってアカウントの安全性を担保するには、フィッシング対策や多要素認証、パスワードマネージャーの活用、さらには行動ベースの防御策から、AIや量子コンピューティングといった次世代の脅威への備えまで、専門家の知見を結集した包括的なアプローチが不可欠です。

主なポイント(要約):

  • パスワードマネージャーを使用し、すべてのアカウントで固有のパスワードを生成する。
  • 可能な限り、フィッシング耐性のある多要素認証またはパスキーを有効にする。
  • アカウント復旧手段を確認し、古い端末や連絡先を削除する。
  • 心当たりのないログイン画面が表示された際は、街中で少しでも危険を感じた時のように扱う。いったん立ち止まり、URLを確認し、心当たりのないメールやダイレクトメッセージ内のログインリンクは開かない。
  • 段階的にパスキーの利用へと移行し、パスワードへの依存度を下げる。
  • 手動でパスワードを作成する場合は、25文字以上を目指す。AIや将来の量子コンピューティングの脅威により、従来の長さでは安全性が低下します。最も確実な対策は、パスワードマネージャーに長い、完全にランダムなパスワードを生成させることです。

変化する脅威環境

攻撃者にとって、システムへの強行侵入は過去のものとなりつつあります。フィッシングやマルウェア、漏洩リストから不正に入手した認証情報を使い、正規ユーザーとしてログインするだけで、容易に内部へ侵入できてしまうのが実態です。さらに、ユーザーがパスワードの使い回すことにより、攻撃者は複数のサービスやプラットフォームへと次々に被害を拡大させます。同時に、AIの進歩によってパターンベースの推測や解析ツールの精度が向上しています。実環境での検証によると、AIの活用により、ランダムに生成されていないパスワードの実質的な強度は約2〜5文字分低下することが示されています。また、量子技術(Groverのアルゴリズムなど)が実用化されると、パスワードを同等の強度に維持するためには、はるかに長いランダムキーが必要になります。

そのため、ログイン時におけるマウスの動きやタイピングの速度といった、各種シグナルやユーザー行動の識別がますます重要になっています。リスクベース認証や行動認証を活用することで、不審な挙動を検知し、攻撃が成功する前にアカウントの乗っ取りを阻止できます。

30分でできる実践的なアイデンティティセキュリティチェックリスト

以下は、15〜30分で実践できるベストプラクティスのチェックリストです。

  • パスワードマネージャーを導入・設定し、重要なアカウント用に個別のパスワードをインポートまたは作成する。
  • メール、銀行、クラウド、主要なSNSアカウントで、フィッシング耐性のある多要素認証を有効にする、またはハードウェアセキュリティキーやパスキーを登録する。
  • バックアップ用メールアドレスや電話番号を更新し、アカウント一覧から古い端末を削除する。
  • メール、銀行、主要SNS、クラウドストレージ、業務用アカウントなど、最重要の5つのアカウントを選び、最優先で保護する。
  • 情報漏洩している情報を確認し、パスワードマネージャーを使って該当するパスワードを変更する。
  • パスワードが物理的に保管されていないか確認する。PCやデスク周りの付箋は必ず処分してください。どうしても書面での記録が必要な場合は、金庫に保管する。

KnowBe4のCISOアドバイザーによる専門的なアドバイス

実践的で将来を見据えたパスワード対策として、KnowBe4のCISOアドバイザーは次の点を推奨しています。

  • ベストプラクティスは、パスワードマネージャーを使い、可能な限り25文字以上の真にランダムなパスワードを作成することです。さらに、そのパスワードを覚える必要もありません。- Roger Grimes
  • パスワードマネージャーや多要素認証を使用できない場合は、パスフレーズや覚えやすいルールを使う方法もあります。ただし、手動で作成するパスワードは、AIを活用した推測や将来の量子リスクに備えるため、25文字以上を目指してください。- Roger Grimes、Kawin Boonyapredee
  • 複雑なパターンよりも、長さと固有性を優先します。AIはパターンの発見に長けているため、私は規則性のある構成は避けます。- Anna Collard、Roger Grimes
  • Webサイト側でパスワードの長さに制限がある場合は、多要素認証やパスキーを使用してください。また、ベンダーに対して、より長いパスワードや最新の認証標準に対応するよう働きかけることも重要です。- Roger Grimes

行動ベースおよび組織的なコントロール

  • 重要なシステムでは、フィッシング耐性のある多要素認証を必須とします。- Kawin Boonyapredee、Roger Grimes
  • リスクベース認証と行動認証を導入し、通常とは異なるログイン時のリズムを検知して、追加認証を求める、またはアクセスをブロックできるようにします。- Anna Collard
  • サービスアカウントキーは一元管理し、定期的に更新する。認証情報を共有ドキュメントやプレーンテキストのまま保管することは避けてください。- Kawin Boonyapredee
  • 従業員がログイン時に危険を見抜く感覚を身につけられるよう、フィッシングシミュレーションとトレーニングを実施してください。- Anna Collard

なぜ今行動すべきなのか

World Password Day 2026は、パスワードを境界防御として扱う考え方をやめ、アイデンティティそのものを境界として捉え直すためのきっかけです。パスワードへの依存を減らし、必要な場合は25文字以上の長く固有のパスワードを使用し、フィッシング耐性のある多要素認証やパスキーを導入し、すべてのログインに行動ベースおよびリスクベースの確認を組み込む必要があります。今日できる小さな対策が、攻撃者に侵入される可能性を大きく下げます。

この日が重要なのは、事後でもインシデント発生時でもなく、「今」行動を起こすための世界的な契機となるからです。認識しやすいイベントで促されることで、ユーザーや組織は、パスワードマネージャーの導入、フィッシング耐性のある多要素認証の有効化、復旧用連絡先の更新、共有認証情報の監査に取り組みやすくなります。こうした集団的な行動は、悪用されやすいアカウントの数を減らし、サービス全体のレジリエンスの基準を引き上げ、クレデンシャルスタッフィングや大規模フィッシングなどの自動化された攻撃の効果を弱めます。

アイデンティティレジリエンスのための90日ロードマップ

以下は、段階的に改善を進めるための90日間のロードマップです。

  • 1〜2週目:パスワードマネージャーをインストールし、最重要の5つのアカウントをフィッシング耐性のある多要素認証またはパスキーで保護する
  • 3〜6週目:その他の重要アカウントをパスワードマネージャーに取り込み、復旧オプションを更新し、古い端末を削除する
  • 2か月目:組織全体でフィッシング耐性のある多要素認証を必須とするポリシーを展開し、リスクベース認証および行動認証の試験導入を開始する
  • 3か月目:サービスアカウントと管理者認証情報を一元管理された保管庫に移行し、ローテーションを徹底する。ベンダーに対して、25文字以上のパスワードやパスキーへの対応を求める

世界パスワードデーのような特別な日は、後回しにしがちな将来のリスク(AIによる推測や量子脅威など)に注意を向ける契機にもなります。より長いパスワードや最新の認証規格(パスキー、FIDO2)への対応をベンダーに促し、組織全体へのリスクベース認証や行動認証の導入を進める絶好の機会です。こうした年に一度の啓発をきっかけとする小さく継続的な改善は、時間の経過とともに積み重なり、個人や組織を「漏洩後の事後対応」から「先回りのアイデンティティレジリエンス」へと移行させます。

避けるべきアイデンティティセキュリティのよくあるミス

  • 複数サイトでのパスワードの使い回し。一箇所での情報漏洩が、多くのサービスへの侵入口となります。
  • フィッシング耐性のある選択肢があるにもかかわらず、SMSベースのMFAに依存すること。
  • アカウント復旧手段を見落とす。古い電話番号やメールアドレスは、侵害の経路になることがある。
  • メモしたパスワードの放置。

結論として、世界パスワードデーは単なるリマインダーではありません。デジタルアイデンティティのコントロールを取り戻すための呼びかけです。今すぐ具体的な行動を取りましょう。パスワードマネージャーを導入し、最重要アカウントでフィッシング耐性のある多要素認証またはパスキーを有効にし、復旧手段を保護し、25文字以上の固有のパスワードを使い始めてください。あるいは、パスワードマネージャーにその作業を任せることもできます。

一つひとつの小さな対策が、攻撃者になりすまされる可能性を下げ、周囲を狙うハッカーの攻撃コストを引き上げます。今回のWorld Password Dayを、ネットワークの防御からアイデンティティの防御へと舵を切る転換点にしましょう。現代の脅威環境において、アイデンティティこそが新たな境界であり、ログイン時の適切な行動が最も強力な防御線のひとつとなります。

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