ランサムウェア被害から透ける企業のセキュリティ上の構造的な問題

TOKYO, JP | 2025年10月29日

日本国内で大規模なランサムウェアによる被害報告が後を絶ちません。被害の背景には、技術導入への注目に比して、多層防御、ゼロトラスト、そしてセキュリティ文化といった側面での構造的な課題が潜んでいます。

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段階的な侵攻と外部通信監視の重要性

ランサムウェア攻撃は、標的システムをすぐにロックダウンせず、段階的なプロセスを経て目的を達成します。

  • 侵攻プロセス: 初期段階でWindowsの標準ツールやマルウェアを利用し、内部情報の探索や重要システムへのアクセスに必要な権限窃取を行います。その後、侵入したマルウェアは、インターネット上のC&C(コマンド&コントロール)サーバーと繰り返し通信し、情報を提供したり、新たなマルウェアや機能をダウンロードしたりしながら、徐々に侵攻を強化します。
  • 技術の機能不全: 2008年頃から普及した次世代ファイアウォールは、外部への通信を詳細に可視化する能力を持ちます。HTTPSの複合処理や、DNS通信の悪用を防ぐDNSセキュリティを適切に運用していれば、C&Cサーバーとのやり取りを早い段階で検知し、攻撃を未然に防げた可能性が高いです。また、機密情報を盗み出し公開を盾に脅す二重恐喝が一般化している現状は、アウトバウンド通信の適切な監視ができていなかったことを示唆しています。

組織的なセキュリティ運用の欠如

導入済み製品が機能しない背景には、組織の構造的な問題があります。

KnowBe4が提供する、ランサムウェアの手法を用いた不正な外部情報持ち出しを擬似的に発生させる診断ツール「BreachSim」の活用を敬遠する組織があることに、その問題が顕在化しています。

  • 構造的な調整コスト: 診断目的であっても、ネットワークインフラを担う部署や外部委託先との連絡調整が必須となるため、これを煩雑として診断実施を避ける傾向が見られます。
  • 運用力の欠如: この姿勢は、せっかく導入した次世代ファイアウォールなどの運用が不十分であること、そして、優れたセキュリティ製品を組織的に横断活用できる体制が整っていないことを意味し、技術導入に見合った組織的な運用力の欠如を浮き彫りにしています。

ゼロトラスト概念の誤解または不完全な実装

コロナ禍で広まったゼロトラストの概念は、「すべてのトラフィックを信用せず、常に検証せよ」をメインコンセプトに、重要なデータへのアクセス制御の厳格化と、トラフィックの常時監視を説いています。

  • 実態との乖離: しかし、ランサムウェアによって重要システムがロックされ、機密情報が持ち出されるという現実は、多くの企業がゼロトラスト概念を正しく理解できていなかったか、流行に乗った不完全な実装・運用にとどまっていた可能性を示唆します。
  • 内部の脆弱性: 外部からのアクセスに強固な認証を適用しても、内部ネットワーク内では脆弱なパスワードポリシーが採用されているなど、内部トラフィックの検証や重要システムへのアクセス制御が厳密に行われていなかったことが、被害を防げなかった原因と考えられます。

根深いITガバナンスと組織構造の問題

どんなに優れたセキュリティ製品やテクノロジーを導入しても、その機能を十分に理解し、正しく運用しなければ効果は限定的です。

  • ITガバナンスの欠如: 経営層がセキュリティ強化の重要性を明確にし、全社的なプロジェクトとして実施を指示するITガバナンスが欠けていると、セキュリティ部門は組織内で十分な権威を持たされません。
  • 部門間調整の限界: セキュリティ強化に伴う現場の不便に対する部門間調整が「お願い」に留まり、結果として、せっかく導入したセキュリティ製品も十分に機能を発揮できず終わってしまいます。

ランサムウェアの被害は、単なる技術不足ではなく、むしろ根深い組織の構造的な問題にあると言えます。「EDRの導入」「認証強化」といった対症療法的な対応で幕引きを図るのではなく、これまでのセキュリティが機能しなかった組織的な問題について、意識や動機付けといった根本的な部分から掘り下げて振り返ることが不可欠です。

KnowBe4のセキュリティ意識向上トレーニングは、このセキュリティ文化の形成を強力に支援します。従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高め、日々求められるセキュリティ上の判断において適切な意思決定を可能にします。KnowBe4は、世界の7万社を超える企業や団体に採用され、全従業員がセキュリティを重視する組織文化の形成に貢献しています。

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Topics: フィッシング, KnowBe4 SATブログ, セキュリティ文化

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