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相次ぐSNSへの内部情報流出――組織に求められる「レジリエンス」とは

作成者: TOKYO, JP|May 22, 2026 1:00:04 AM

近年、SNSを通じた内部情報の流出事案が後を絶ちません。最近では、西日本シティ銀行の「BeReal」 による執務室内での撮影・投稿による顧客情報の流出が大きな注目を集めましたが、こうしたSNSを通じた事案は、市役所の新人研修資料流出、大手放送局、大手飲食チェーンなど、業種を問わず発生しています。

これらの事案は、単なる「個人のモラル」の問題として片付けるべきではなく、組織の在り方やマネジメントの構造的課題として捉える必要があるのではないでしょうか。本記事では、一連の事案から見える組織の課題を分析し、改善に向けた提言をまとめます。

1. 表面化しにくいSNSリスク

一部報道などによると、西日本シティ銀行の事例では、問題となった投稿が発信から時間を経て拡散されたと言われています。もし過去の不適切な行為が組織内で検知されず、長期間放置されていたのだとすれば、そこには「目の前のルール違反に声を上げられない」という心理的安全性の欠如が考えられます。もし周囲が気付いていながら沈黙していたのだとすれば、それは組織文化の課題と言えるでしょう。

2. 進化するテクノロジーと、追いつかないリスク認識

近年のSNSを取り巻く環境は、発信時の「吟味」や「確認」を省略させやすい方向へと変化しています。例えば若者に人気のアプリ「BeReal」は、通知から2分以内の投稿を促すなど、周囲の環境や、今自分が置かれている状況を冷静に判断する「猶予」を与えない仕組みを持っています。そのため、リスクに気付かないまま衝動的な発信を誘発しやすくなっています。

また、市役所の新人研修資料が、不特定多数が閲覧できるグループチャットに流出した事例にみられるように、若年層にとっては特定のコミュニティ内での「何気ない日常の切り取り」や「悪意のない情報共有」のつもりでも、組織にとっては「重大なセキュリティリスク」に直結するという、認識の深刻な乖離が生じています。

こうした事案の背景には、「非公開設定(鍵アカウント)や友達限定の範囲であれば大丈夫だろう」という利用者側の過信が潜んでいる可能性も否定できません。しかし、デジタルデータである以上、一度投稿されたものは容易に保存・拡散され、組織の機密が外部へ流出するリスクを常にはらんでいます。

こうした「個々の意識の差」は、規程の配布といった一方的な教育だけで埋めることは困難です。そこで、新人や若手社員との対話を通じて「流行アプリの実態」や「無意識の投稿リスク」といった生きた情報を定期的に吸い上げ、教育プログラムを毎年柔軟にアップデートし続けることが求められます。現場のリアルな感覚を反映させ、リスクの芽を共同で摘み取っていく姿勢こそが、今まさに不可欠なフェーズにあります。

3. 「レジリエンス・マネジメント」という視点

サイバーセキュリティの文脈において、「レジリエンス」はシステム障害や攻撃を受けた際のバックアップからのリカバリ(復旧力)を指して使われることが一般的です。しかし、今回のようなSNS事案に立ち向かうためには、システムの復旧能力だけでなく、組織全体としての「適応的なレジリエンス」という視点が欠かせません。

ここで言うレジリエンスとは、単に「起きた後に元に戻す」ことだけを指すのではありません。表面化した小さな予兆から学び、ルールを常にアップデートし続ける「進化する力」を指します。

さらに重要なのは、「失敗」の要因ばかりを追求するのではなく、普段「うまくいっている状態」がいかに維持されているかにも目を向けることです。

私たちは不祥事が起きた時だけ原因を分析しがちですが、実はその背後で、大多数の従業員が日頃から無意識に実践している「良い習慣」や「リスクを回避する姿勢」が無数に存在します。

例えば、「SNS投稿を思いとどまった瞬間」や「職場の異変をさりげなくカバーし合っている日常の行動」など、普段は注目されない「成功の要因」を組織として言語化し、共有する姿勢が不可欠です。危険なエラーを防ぐ努力と同時に、日々の正しい適応行動から学び、それを組織の強みとして育んでいく。こうした双方向の学びが、変化に強い強靭な組織文化を創り上げるのではないでしょうか。

【提言】相次ぐ流出事案を防ぐために――企業・団体が取り組むべき3つのこと

多くの組織で同様のトラブルが相次ぐ今、私たちは「禁止事項の徹底」という旧来の手法を超えたアプローチを検討すべき時期に来ています。

① 「指摘し合える文化」の再構築

ルールを増やす以上に重要なのは、現場で「それ、危ないですよ」と自然に言い合える空気感です。新入社員からベテランまで、心理的安全性をベースとした相互牽制が機能する組織づくりが、最大の防御壁となります。

② 世代間の「常識」を埋める双方向のダイアログ

「鍵アカだから安心」といった従業員側の過信や、BeRealなどの新しいSNSの仕組みに対する組織側の理解不足を解消するため、セキュリティ担当者や教育担当者は、定期的に新入社員などとの対話の場を持つことが推奨されます。毎年の対話を通じて「今、何が流行し、どのような感覚で使われているのか」をアップデートし続けることが、リスク予見の第一歩となります。

③ 「学習する組織」への転換

インシデントを「誰かの責任」として終わらせるのではなく、組織全体の構造的欠陥を見つける「学習の機会」と捉えるべきです。軽微な事案のうちに原因を分析し、その知見をレジリエンス管理の体制に組み込むことで、変化に強い組織へと進化することが求められています。

不祥事が起きた際、個人の責任を問うことは容易です。しかし、真に問われるべきは、それを防げなかった、あるいは予見できなかった「組織の構え」ではないでしょうか。今一度、自分たちの組織が「変化に適応できているか」を問い直す必要があります。

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