KnowBe4 Blog (JP)

電気が止められる前に!電力サプライチェーンの脆弱性に挑む

作成者: TOKYO, JP|Jun 4, 2025 12:00:00 AM

エネルギー業界は、私たちの暮らしを支える不可欠な存在です。家庭の明かりから産業を動かす燃料の供給まで、エネルギーがなければ、現代社会は成り立ちません。

複雑に絡み合うエネルギーのネットワーク
エネルギー業界は、発電所や風力タービンに限らず、送電線や配電網、蓄電設備、制御・通信システム、さらには多数の外部委託先まで、多層的なシステムによって成り立っています。そのひとつひとつがサプライチェーンの一部であり、同時にサイバー攻撃の侵入口にもなり得ます。

さらに、この業界は国境を越えて展開しているため、アタックサーフェスが大きくなり、サイバー犯罪のリスクが高くなります。ひとたび脆弱性が突かれれば、その影響は一国だけにとどまらず、さらに広いサプライチェーンやネットワーク全体に波及するおそれがあります。

家庭での接続も新たなリスクに
近年では、太陽光発電の普及や電気自動車(EV)の充電インフラの拡大により、家庭や個人が直接電力網に接続する機会が増えています。大規模なソーラーファームから住宅の屋根に設置されたパネル、そして無数のEV充電器がそれぞれ電力網とインターネットを結ぶ接点となり、サイバー攻撃者にとっては新たな標的となり得ます。どのような機器であれネットにつながる限り、セキュリティが甘ければ、全体のシステムに影響を及ぼすリスクがあります。

レジリエンス強化へ:eFORTプロジェクト
こうした課題に対処するため、欧州委員会は2024年8月に「eFORT」プロジェクトを始動しました。多国間で行われるこの研究プロジェクトは、ヨーロッパの電力インフラが急速にデジタル化する中で、その信頼性と耐性を高めることを目指します。

eFORTでは、さまざまな攻撃シナリオを想定したシミュレーションや、電力網を守るための技術的な対策の検証を進めており、特にサプライチェーンに潜むリスクの低減に重点を置いています。

電力を守るのは、社会全体の責任
エネルギーインフラを守るのは、エネルギー企業だけの課題ではありません。政府、規制当局、技術者、そして最終的な利用者までもが、その責任を共有しています。強固なセキュリティ対策、継続的なモニタリング、そして迅速な対応体制の構築が、リスクを最小限に抑える鍵となります。

サプライチェーン保護のための実践的アプローチ
エネルギー業界のサプライチェーンを保護するには、多面的な取り組みが必要です。具体的な対策として、まずベンダーリスクの管理が欠かせません。すべての外部委託先に対して厳密な審査を行い、信頼できる業者とのみ取引を行う体制を整える必要があります。定期的なセキュリティ監査やペネトレーションテストも、問題の早期発見につながります。

また、ゼロトラストモデルの導入も効果的です。これは、どのユーザーやデバイスも信頼せず、常に認証を要求することで、不正アクセスのリスクを減らす考え方です。

データの暗号化、厳格なID管理およびアクセス制御の導入も必須です。さらに、従業員一人ひとりに対する教育・意識向上プログラムを通じて、サプライチェーン全体でセキュリティ文化を構築することも重要です。

そして何より、エネルギー企業同士、政府機関、専門家の間で情報を共有し、連携を深めていくことが、業界全体の防御力を高めるうえで不可欠です。

安全な電力インフラを築くために
エネルギー業界のデジタル化が進む中で、サプライチェーン全体のセキュリティを確保することは、これまで以上に重要な課題となっています。新たな技術やサービスがもたらす利便性の裏には、必ず新たなリスクが潜んでいます。

そのリスクに備えるには、初期段階からセキュリティを意識した仕組みを構築し、継続的な投資と、業界を越えた協力体制、そして柔軟な対応力が求められます。

「Could Cyber Attacks 'Turn the Lights off’ in Europe?(サイバー攻撃でヨーロッパの灯が消える日は来るのか)」の全文はこちらからダウンロードいただけます。

原典:Javvad Malik著 2025年4月18日発信 https://blog.knowbe4.com/powering-down-vulnerability-securing-energy-sectors-supply-chain