フィッシングは、多くの組織が追いつけないほどの勢いで拡大しています。攻撃件数は前年比で400%増加しており、組織は今や、マルウェアよりもフィッシングに狙われることが増えています。ソーシャルエンジニアリングが企業環境への主要な侵入口となる中、フィッシングリスクの評価方法は、トレーニングの実施頻度と同等に重要です。
多くのフィッシング対策プログラムでは、予測しやすいシナリオや固定テンプレートへの依存が今も見られます。一方で、実際の攻撃は常に進化しています。現在のフィッシングメッセージは、日常業務に自然に紛れ込むよう設計されており、使い慣れたツールに言及し、信頼されている送信者を装い、従業員が忙しい時や注意が散漫になっているタイミングで届きます。こうした環境の中、形式的なシミュレーションだけでは、日常の中でリスクにつながる行動を捉えきれないことがあります。
最も効果的なフィッシングシミュレーションは、攻撃者の手口の進化に合わせて変化するものです。現実的なシナリオを使用することで、ユーザーがプレッシャーのかかる状況で実際にどう行動するのか、また習慣や対策のどこにほころびが生じるのかを把握できます。今後もフィッシングメッセージはAIにより進化し続けるため、シミュレーションも柔軟に適応させていく必要があります。
主なポイントフィッシングシミュレーションとは、模擬のフィッシング攻撃をユーザーに送信し、その対応を測定する、安全かつ管理されたテストです。これらのシミュレーションは、組織に実害を与えることなく、現実のフィッシング手法を再現します。
シミュレーションの目的は従業員を騙すことではありません。日々の業務の中でどこにリスクがあるのかを把握し、実際のフィッシング攻撃によってアカウント侵害、マルウェア感染、データ損失が起きる可能性を減らすことにあります。
フィッシングシミュレーションは、単発のキャンペーンではなく、繰り返し実施するプログラムとして運用すると最も効果的です。設定方法はツールによって異なりますが、ほとんどのプログラムは共通する基本ステップに沿って進みます。一般的な流れは次のとおりです。
フィッシングシミュレーションでは、攻撃者がよく使う手口を再現した、現実的なメール、メッセージ、リンクを送信します。たとえば、次のような例があります。
優れたシミュレーションは、従業員に実際に届く可能性の高いフィッシングメッセージを反映しており、時間とともに内容も変化します。これにより、ユーザーがシミュレーションの見分け方を覚えるのではなく、フィッシングそのものを見抜く力を養えるようになります。
ユーザーが現実の不審メールにどう対応するかを把握するために、シミュレーションでは次のような行動を追跡します。
これらの行動を通じて、どのようなメッセージが最もリスクの高い行動を引き起こすのか、また誰が追加のトレーニングが必要なのかを把握できます。
シミュレーションの実施後、セキュリティチームは結果を確認し、リスクのあるグループを特定します。こうした知見は、従業員の判断力の強化に活用されます。
また、次にどのシミュレーションを実施すべきか、どのトレーニングを割り当てるべきか、どのプロセスや対策に見直しが必要かを判断する材料にもなります。このフィードバックループを継続することで、進捗を管理し、リスク低減に最も大きな効果をもたらす行動に重点を置くことができます。
Verizonの2025 Data Breach Investigations Reportによると、データ侵害の10件中6件にヒューマンエラーが関与しています。つまり、技術的な対策だけでは不十分であり、組織をリスクから守るには、人の行動そのものを変えていく必要があります。
実際には、シミュレーションは組織に次のような効果をもたらします。
AIを活用したフィッシングシミュレーションは、ユーザーの行動、役職や職種、最新の攻撃傾向に基づいて、コンテンツ、配信タイミング、シナリオを調整します。これにより、シミュレーションはより現実的で予測しにくいものになります。
従来のフィッシングシミュレーションは、繰り返すうちに単調になりがちです。ユーザーがシミュレーションのパターンを認識し始めると、実際のフィッシングリスクが変わっていないにもかかわらず、結果だけが改善したように見えることがあります。
AIを活用したフィッシングシミュレーションは、次のような形で効果を高めます。
AIを活用したフィッシングシミュレーションによって、単純な合否だけでなく、何が改善しているのか、どこで停滞しているのか、日常環境の中でどのシナリオが最も大きなリスクを生んでいるのかを把握できます。
フィッシングシミュレーションは、単独の施策として扱うのではなく、より広いセキュリティ戦略の中に組み込むことで最も効果を発揮します。シミュレーションだけでは、どこにリスクがあるかを示すにとどまります。他の対策と組み合わせることで、実際にそのリスクを減らせるようになります。
フィッシングシミュレーションは、次の施策と組み合わせることで最も効果的になります。
フィッシングシミュレーションは、現実に近いテストを一定の頻度で継続的に実施することで、どこにリスクが現れているのか、どのシナリオが効果的なのか、行動が時間とともにどう変化しているのかを明確に把握できます。
このようにリスクを可視性することで、対象を絞ったトレーニング、プロセスの見直し、追加の対策など、次に取るべき対応の優先順位をつけやすくなります。
AIの活用によってフィッシング手口が進化し続ける中、シミュレーションを現実的なものに保つ重要性はさらに高まっています。
原典:KnowBe4 Team著 2026年3月4日発信 https://blog.knowbe4.com/phishing-simulation-how-it-works