ネットミームで釣るサイバー攻撃に注意、面白画像が運ぶマルウェア



インターネットミームやバイラルコンテンツは、今やオンライン文化における共通言語となっています。共有しやすく、ユーモラスで、さまざまなプラットフォーム上で急速に拡散されます。

Evangelists-Erich Kron

しかし、その拡散力と文化的な親和性ゆえに、最近では、ミームがサイバー犯罪者や脅威アクターにとって魅力的な攻撃手段となっています。

ミームの構造とは
ミーム自体は新しい概念ではなく、何十年も前から存在しています。実際、1921年に発行された漫画には、現代のミームでもよく見られる ”期待 vs. 現実” というテーマが描かれていました。インターネットがなかった当時は、厳密には ”ミーム” とは呼べませんが、100年以上経った今でもユーモアの本質は変わらずにいます。

では、なぜ現代のミームは危険なのでしょうか?そして、なぜ私たちは警戒する必要があるのでしょうか?

その主な理由は、1912年のミームとは異なり、現代のデジタル環境ではミームがインターネット上で瞬時に拡散されるからです。多くの人が無害な娯楽としてミームを共有していますが、現代のサイバー犯罪者にとって強力なツールにもなり得ます。ミームは、フィッシング、偽情報、ソーシャルエンジニアリング攻撃の入り口となる可能性があります。また、拡散力が高く、脅威が検知される前に多数の人に到達するため、サイバー犯罪者にとって非常に魅力的な存在となります。

マルウェアを運ぶミーム
現代のサイバー犯罪者は、従来のセキュリティ対策を回避するために、常に手法を進化させています。怪しいメールや添付ファイル、ソフトウェアのダウンロードとは異なり、ミームは一見無害で、X(旧Twitter)、Reddit、Facebook、Instagram、WhatsAppなどのプラットフォーム上で広く共有されています。このような画像の中に悪意のあるコードを埋め込むことで、攻撃者はセキュリティフィルターを回避し、被害者のデバイスを感染させることができます。

2018年には、セキュリティリサーチャーがTwitterに投稿されたミームを使って感染端末と通信するマルウェアキャンペーンを発見しました。このマルウェアは、ステガノグラフィーと呼ばれる手法で画像内に隠されたコマンドを抽出し、データの窃取やリモートでのコード実行といった悪質な活動を実行していました。これらは目立った警告を出すことなく行われていたのです。

サイバー犯罪者がミームを悪用する手口
ハッカーたちは、ミームをサイバー攻撃の手段として利用するためにさまざまな手法を駆使しています。代表的なものを以下に示します。

ソーシャルエンジニアリングとフィッシング

ミームのユーモラスで世間からの信頼感のある性質が、被害者を悪意のあるリンクへ誘導する手口として悪用されています。人間はユーモアに対して警戒心を緩めがちです。本来なら怪しいと感じるはずのフィッシングサイトも、ミーム経由であれば警戒せずにアクセスしてしまうリスクがあります。これによってログイン情報を盗まれたり、マルウェアをダウンロードさせられたりするリスクがあります。また、ミームは広く共有されるため、たった1件の投稿が数千人に届く可能性があります。

情報収集の観点からも、ミームは無警戒な人々を狙うのに最適です。SNSを頻繁に使っている人なら、一見無害だが、セキュリティ意識の高い人には危険だと感じるようなミームを見たことがあるでしょう。

このようなミームは一見無害に見えますが、実際には、ログイン情報である秘密の質問へ誘導する内容となっています。

ステガノグラフィー(画像や音声ファイル内に隠れたコード)

恐竜を連想させるような名前ですが、ステガノグラフィーとは画像、動画、音声ファイルなどのデジタルデータの中にテキストを隠す手法です。特定の条件下では、この隠されたテキストがほとんどのセキュリティ制御やマルウェア検知をすり抜け、被害者の端末上で再構築され、マルウェアとして実行されることがあります。この攻撃手法は過去にも確認されており、今後はAIツールの進化とともにさらに拡大すると予想されます。

コマンド&コントロール通信

攻撃者は、ミームの画像にマルウェア本体を埋め込むのではなく、すでに感染されている端末にコマンド送るために利用する場合もあります。リサーチャーは実際に、特定のSNSアカウントのミームに攻撃コマンドが埋め込まられていることを確認しています。この方法により、攻撃者は検出されることなく遠隔操作でコマンドを送信できます。このような巧妙な攻撃が多いため、私たちは常に警戒を怠ってはなりません。

ミーム型マルウェアから身を守るには
ミームそのものが危険というわけではありませんが、それを武器にするサイバー犯罪者の存在を考慮すると、個人および組織全体も警戒を怠るべきではありません。以下の対策を実施しましょう。

不審なリンクやダウンロードに注意する:信頼できないソースから画像をダウンロードすることや、ミームを装ったリンクのクリックは避けましょう。特に見知らぬウェブサイトやSNS、メールの添付ファイルには注意が必要です。

高度な脅威検出ツールを活用する:ステガノグラフィーの検出機能を持つセキュリティソリューションを導入することで、画像内に隠されたマルウェアの検出が可能になります。エンドポイント保護ソフトウェアやメールフィルタリングツールも、悪意のあるコンテンツからの被害を軽減できます。

サイバー脅威に関する最新情報を常に把握する:サイバー犯罪者の手口は日々進化しています。ミーム型攻撃などの新たな攻撃手法について常に情報を収集し、先回りした対策を講じましょう。

ソーシャルエンジニアリングについて従業員やユーザーに教育する:多くのミーム型攻撃はソーシャルエンジニアリングに依存しています。ユーモアの裏に潜む悪意に対して、社員やユーザーに注意喚起し、具体的なフィッシング手口について教育することが重要です。

信頼されていない実行ファイルやスクリプトを制限する:組織は、画像を含む不審なファイルからの不正なコード実行を防ぐために、厳格なセキュリティポリシーを導入する必要があります。

デジタルユーモアの影に潜む脅威:笑いの裏にあるリスクに備える
ミームはオンライン文化の重要な一部であり、時には必要としているときに笑いを提供してくれます。しかし、広く利用されるデジタルメディアであるがゆえに、サイバー犯罪者の標的にもなっています。ミーム型攻撃におけるステガノグラフィーやソーシャルエンジニアリングの活用は、私たちがデジタル空間で警戒を怠ってはならない理由を物語っています。情報を収集し、強固なサイバーセキュリティ対策を導入し、高度なセキュリティツールを活用することで、笑いを楽しみながらも隠された脅威に対する防御を強化できます。

笑いすらも無垢ではいられない時代において、少しの注意が大きな違いを生むのです。

原典:Erich Kron著 2025年4月3日発信 https://blog.knowbe4.com/malicious-memes-how-cybercriminals-use-humor-to-spread-malware

Topics: フィッシング, KnowBe4 SATブログ, セキュリティ文化

Get the latest about social engineering

Subscribe to CyberheistNews