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セキュリティ意識向上月間:『まあいいか』の罠にひっかかるな!(The Doppelgänger編)

作成者: TOKYO, JP|Nov 5, 2025 1:00:00 AM

どれほど優秀でも、無縁ではいられません。

これは10年ほど前、私がFortune 10企業に勤めていた頃の話です。主観的ではありますが、社内外の多くの人が、その出来事の当事者を「一番頭のいい人」と見なしていました。

ある日、スーパーボウル観戦の準備をしていた彼のもとに、共同プロジェクトで関わっている他社の社員からメールが届きました。プロジェクトに関連するドキュメントを見つけたので目を通してほしいという内容です。彼がそのドキュメントを開くと、コマンドプロンプトの小さなウィンドウが一瞬だけ開いて、すぐに閉じました。目を疑うほど一瞬の出来事でした。

しかも、そのドキュメントはプロジェクトと無関係な内容でした。スーパーボウルを楽しみにしていたので、彼は「まあいいか」と思い、首をかしげつつPCを閉じました。

この「まあいいか」という感覚を擬人化した存在が、セキュリティ意識向上月間のArcade Villainsにおける4体目、最後の悪役「The Doppelgänger(ドッペルゲンガー)」です。

ドッペルゲンガーは、私たちの中に住み着き、フィッシングやマルウェアの疑いがあっても「無視するのが一番だ」と囁きます。しかし、その誘いに耳を貸してはいけません。

話を戻します。

数時間が過ぎ、彼はあの一瞬のコマンドプロンプトが気になり始めました。あれは罠が仕込まれたドキュメントで、何らかの不正コマンドが高速で実行されたのではないか。そんな考えがよぎります。

とはいえ、はっきり見たわけではありません。ただ、もし本当に悪質なものだったとしたら、自分がソーシャルエンジニアリングに引っかかってマルウェアを実行してしまったと会社に思われるのではないか。恥ずかしさがよぎりました。

さらに1時間が経ちました。

それでもやはり気になって仕方がなく、彼はヘルプデスクに状況を報告しました。30分以内に担当者から返信があり、Microsoft PowerShellスクリプトによるバックドアが実行され、攻撃者の接続待機状態であることがわかりました。共同プロジェクトの相手側社員のメールアカウントは侵害され、罠が仕込まれたドキュメントの送信に悪用されていました。

幸いなことに、攻撃者はまだバックドアに接続しておらず、被害は出ていませんでした。セキュリティ担当者がメールログを横断的に検索したところ、他の役員宛てにも約100通が送られており、うち4件が実行されていました。いずれもまだ攻撃者による接続には至っていませんでした。しかし、誰からも報告はありませんでした。

遅れてでも最初の被害者が報告してくれたからこそ、組織は侵害や情報漏えい、さらにはランサムウェアといった深刻な事態を避けられた可能性が高いのです。

インシデント報告はドッペルゲンガーへの特効薬

少しでも「怪しいかな」と思った時点で、適切に報告(Phish Alert Button、ITセキュリティ、ヘルプデスクなど)することが重要です。報告すれば、担当者が調査し、本物の攻撃かどうかを確認できます。対策が講じられ、報告者本人だけでなく組織全体を守れます。一切ネガティブなことではありません。逆に、組織のレジリエンス向上にしかつながりません。

フィッシングやマルウェアの可能性があるメールなどを見かけたら、絶対に無視しないでください。ドッペルゲンガーの囁きに従わず、あらゆるセキュリティインシデントを報告してください。あなたの一報が、あなた自身と会社を大きなトラブルから救えるかもしれません。

原典:Roger Grimes著 2025年10月27日発信 https://blog.knowbe4.com/cyber-security-awareness-month-doppelganger-promotes-incident-hiding-why-saying-something-when-you-see-something-is-so-important