ミネソタ州ミネアポリスに拠点を置く投資銀行「Piper Sandler」は毎年業界向けのレポートを発行し、CIOを対象とした調査結果に基づいて来年度の予算の予測を公開しています。同レポートは、2024年は企業のIT支出に顕著な増加が見込まれると予測しています。
Piper Sandlerの調査レポートの見出しは、「2024 CIO Survey | Investments in Security, AI, and Cloud Driving IT Rebound (2024年のCIO調査|セキュリティ、AI、クラウドへの投資がIT支出の回復を牽引)」となっています。このブログでは、本レポートの概要と注目ポイントについて簡単に紹介します。
本レポートの概要:
2024年、2025年、2026年に向けて、企業のIT支出は急増することが見込まれています。今後3年間はそれぞれ0.6~0.7パーセント程度ゆるやかに加速することが予測されており、IT予算の伸び率は3.1%であった2023年から2026年には5.1%に達し、2022年の1.6%を大幅に上回ると予測されます。クラウドへの投資意欲はさらに高く、2023年は6%、2022年は1.4%でしたが、2024年に8.9%、2025年に10.5%、2026年に12.1%へと加速すると予測されています。2021年にピークを迎えたパンデミックから2年間はITへの支出は芳しくありませんでしたが、セキュリティ、クラウド、AIといった戦略的分野への投資意欲が高まっており、企業ITスタック全体の支出が回復する可能性があります。
注目ポイント:
- 2年間続いた停滞期間を経て高まる予算増加への期待:
2021年のパンデミックのピークから2年が経過し、セキュリティ、クラウド、AIへの戦略的投資を中心とした支出が再び重視されるようになっています。予算が増加されるという楽観的な見方が強まり、これまで抑制されてきたIT支出が回復する可能性があります。 -
セキュリティの優先順位が急上昇、89%が支出増を計画:
カテゴリー別の支出優先順位では、1位「セキュリティ」(6%)、2位「アプリケーション」(66%)、3位「インフラ」(60.7%)、4位「ITサービス」(59%)、5位「データベース」(58.3%)、6位「ストレージ」(56.6%)の6分野となっており、2024年には55%以上の企業が支出増を計画しています。 - 大企業ではAIへの支出は倍増すると予測:
AIに対する企業の関心の高さには驚かされるばかりです。大規模企業の73%が2024年に生成AIの導入計画があり、評価、実践導入するとしています。49%が最も戦略的なAIのパートナー企業としてマイクロソフトを挙げています。次にAI分野の戦略的なパートナー企業として挙げられたのはOpenAIでした。51%の企業がCopilot for Microsoft 365の導入を計画しており、従業員の34%に導入する予定です(これは驚くほど高い数値です)。 - 「AIハロー効果」でクラウド予算の増加率は2倍の12%に達する可能性も:
クラウド業界の成長率(n=100)は、パンデミックバブル期の2021年に中央値34%でピークを迎えましたが、その後2年間は鈍化して、2023年第4四半期には平均値が15%まで落ち込みました。2024年は、増加するデータ量がパブリッククラウドやエッジクラウドにシフトする「AIハロー効果」によって、新たなクラウド投資サイクルが始まるとみられています。 - データベース、ITサービス、通信ソフトウェアの支出意向が前年比で最も上昇:
2023年7月の調査から、すべての製品カテゴリで支出が改善しています。前年比で最も改善したのは1位データベース、2位ITサービス、3位通信ソフトウェアの3分野でした。
原典:Stu Sjouwerman著 2023年12月11日発信https://blog.knowbe4.com/2024-it-spending-surge-surprising-insights-from-piper-sandlers-cio-survey